狭小敷地での設計
採光を確保するための創意工夫



大都市では、住宅用の宅地は細分化される傾向にあります。もともとは大きな邸宅の建っていた土地を分筆して、個人でも買える値段に設定し住宅用地として切り売りするので、土地の広さは15坪〜20坪程度になることが一般的です。

昔の日本の住宅は、土地に余裕があり周りに庭を配することによって採光を確保していましたが、昨今の密集した住宅街での狭小地では、周りの建物が迫っているため採光の確保は至難の業になります。したがって、狭小住宅の設計のコツは、まさに採光との戦いです。

ただ単に外周部に窓をあければ良いというものでもありません。構造的な工夫をしなければ、開口部の大きさも制限されてしまいますし、三階建てになれば、構造的には下層階の耐力負荷もとても大きく、家族のニーズからくるプランニング、環境や太陽の方位に左右される採光計画、そして地震や風圧に対応するための構造設計と、それぞれ全く別の論理で要求される事項が、相互の関連に矛盾がないよう十二分に練り込んだ上で、シンプルな解決策にいたらなければ、デザイン的にも、空間的にも、機能的にも満足なものになりません。

ケーススタディとして、Lightwell Houseがあります。敷地は2mほどの細い路地を通って突き当たりあたる場所にあり、周りは迫り来る建物に囲まれ、さらには背面は5〜6mの擁壁が立ちはだかり、通常の建て方では採光を確保することは、至難の業でした。

そこで何度も何度もスタディを繰り返し、たどり着いた解決方法としては、天空からの光を最大限利用するために、3階部分を南北に分けて個室を配し、真ん中に配置されたテラスと吹き抜けが、天空光を下階へと届かせるための「採光のための空間」として確保するアイディアです。

トップライトから降り注ぐ光が2階の広々としたリビングやキッチンを明るくしてくれます。また、玄関から見上げれば、そのトップライトからの光が視線を奥へと導いてくれます。


トップライト見上げ

これを実現するために、実は構造的に創意工夫をほどこしています。
2階のリビング・ダイニング・キッチンには、一切間仕切り壁がありません。通常の方法ではこれはなかなか難しいのですが、外周の壁に強い耐力を持たせることによって、これを実現しています。

Lightwellとは光の井戸という意味です。夏の強い光には電動ブラインドで対処しつつ、春や秋、そして冬には燦々と上から光が降り注ぐ空間は、非常に気持ちの良いものとなりました。
(田島則行)

>>Lightwell House