8月30日の衆議院選挙の結果、民主党による政権交代がついに実現しました。
今、日本はボロボロです。国の体制としても不協和音があちらこちらで聞こえてきて、社会的・構造的な軋みが鳴りやみません。
実は、建築分野はその影響を一番受けている業界です。
思い出してみれば、姉歯事件の反動で建築基準法の法改正で半年間も確認申請が下りないような事態が続き、建設業界が大きな打撃を受けました。
その後さらに、ウォール街発の金融工学で過剰に潤っていた投資資金が建設資材の価格を押し上げたかと思えば、不動産投資市場はサブプライム問題で急激に冷え込み、数多くあった不動産ファンドやディベロッパーが淘汰されていきました。
官製不況と経済不況が同時に押し寄せたのが、今の日本の建築・建設業界でした。
そんな時代だからこそ、民主党の一挙一動からは目が離せません。
修正に修正を加えて、摩訶不思議な暗号文書と化してしまった建築基準法は、役所の人間ですら四苦八苦して解読しています。古い建物一つをリノベーションして再生するのにも、法解釈の厚い壁が立ちはだかり、既存の都市ストックの再利用はなかなか進みません。
都市再生を掲げてコミュニティーセンターやら、美術館やら、アニメの殿堂(?)やらを建設しても、結局は新しい天下り団体を増やし続け、日本の借金は膨れあがるばかりです。
民主党が掲げる、「人」を中心とした日本再生・都市再生には共感する部分が多くあります。
アニメの殿堂だって、いきなり箱物の大きな建物を建てるのではなく、秋葉原という街の空き室・空きビルを連携させて秋葉原の都市再生とリンクさせた運営方針が十分に可能なはずです。そうすることによって、自律的に発展していける都市構造が可能なはずだと思うのです。
大型建設に頼った公共投資が、なぜ日本の将来のためにならないのか。
それは、持続可能性(サステイナビリティ)の問題です。
公共工事は、工事期間中は建設費用を通してその地域にお金がばらまかれます。しかし、そのお金は一過性のものであって、その地域がお金を創出できる仕組み、自律的に地域再生ができる循環構造を作らない限りは、結局は赤字運営の飛行場や美術館となってしまい、地方行政を疲弊させます。
発展途上国であれば、自民党モデルのバラマキ型は成立しますが、人口縮小する今の日本では成立しません。
エコロジーやエネルギーにおいてだけでなく、経済的そして社会構造的な持続可能性、サステイナビリティの向上こそが、我々の目指すべき将来なのです。(田島則行)