毎日のように雨が降って、じめじめとした日々が続きます。
先月から今月にかけては、東京や神奈川に進行中の物件の現場監理に出かけ、配筋検査や仕上げ検査など行いつつ、2つほど物件が竣工・引渡。その合間に富山県の高岡まで出張にも行きました。
また、同時に3つほど新しい物件が開始、他にも新規案件の現場調査に出かけつつ進行中物件の確認申請も提出。かなり仕事に忙殺されておりました。
「竣工・引渡」は、設計にとって、着工と同じぐらいあるいはそれ以上に一大イベントです。手塩にかけて監理してきた物件を、晴れて施主に引き渡すわけですから、ある意味、とても嬉しいと同時に自分の子供が巣立っていくような気持ちになります。
先月頭に大田区で竣工した物件では、竣工引渡の直前になんと奥様の出産が重なってしまい、僕らよりもむしろ施主が大変でした。
奥さんが出産後数週間の間実家で子育てに専念中、旦那さんは竣工検査や登記、引渡、そして引越を全部一人でこなし、こちらが心配してしまうほどでした。
引越も落ち着き、先日引越し後の家にランチに招待されてお伺いしてきました。
出産後母子ともに健やかで、荷物の片付けも終わり、幸せで静かな日々が始まった様子で安心しました。
近隣が密集した住宅街に建つ家ですが、外側は壁で周囲からは閉じつつ、内側にはコートヤードを通して光がいっぱいに注ぎ込みます。
近隣の目も気にせず、カーテンもブラインドもつけず、プライバシーに守られた暮らしです。
「別荘にいるような」とか、「夜が素敵です」とか、率直な感想を頂くと、悩んで悩んで頑張って設計した苦労も報われ、感無量です。
先週末には、改装・リノベーションした別の住宅を引渡ました。
たぶん昨日には引越をなさっているはずです。どんな引越後の感想を聞かせてもらえるのか、ドキドキしながら楽しみにしています。
独立してからしばらくは、設計という仕事を勢いとバイタリティでこなしていましたが、最近は住宅の設計は繊細で難しいが重要な仕事だとしみじみ再認識しています。
家族という人と人を繋ぐ見えない糸を、我々は設計という仕事を通して「空間」を形にし、その家族のライフスタイルや今後の生き方を左右してしまうような、重要な役割を担っていると思うからです。
人生の一大イベントである住宅建築に携わる者として、これまで以上に一つ一つ丁寧に作っていきたいと思います。(田島則行)