建築工事で使用する主な金属としては、アルミ、鉄、ステンレスの3種類が挙げられます。
その他にも銅や黄銅、チタンなども場合によっては使用しますが、一般の住宅においては上記の3種類以外の金属はそれほど使いません。今回はこの3種類の金属の特性と用途についてレポートしたいと思います。
鉄は、これら3つの金属のうちで最も安価な素材で、比較的加工がしやすい材料です。建築図の中ではStと表記します。建築分野での使用量も多く、建物の主構造として柱や梁に使われたり、階段や手摺といった強度を必要とされる部材として幅広く使われています。弱点としては錆びと熱伝導率が挙げられます。鉄は水分中に含まれる酸素に反応し容易に錆びてしまうため、外部に使用する際には錆止めが欠かせません。また熱伝導率も高いので、外気に近い部分では結露の原因になりやすく、その点にも注意が必要です。しかしこの点に注意を払えば、安価で強度的にも優れた素材ですから、色んなところで使用することが可能な汎用的な金属だと言えるでしょう。
鉄の弱点である錆びをなくした素材が、鉄とニッケル(Ni)、クロム(Cr)の合金であるステンレスです。建築の図面中ではSUSと表記します。非常に優れた防錆性を持っているため、建築工事では水のかかる場所に多く使われます。キッチンカウンターやシンク、浴室回りなどの他に、外部サッシとしても多く利用されています。強度的には鉄と同程度の性能をもっており、生地で使った場合には殆どメンテナンスの必要がない利点ばかりの素材なのですが、高価な素材であるため、メンテナンス性などコストバランスを考慮して使う必要があります。またステンレスは成分比率の違いからいくつかの種類に分かれます。単にステンレスと言った場合にはSUS304を指すことが多いのですが、このSUS304は磁性がないため、磁石がつきません。磁性のあるステンレスはSUS403になりますので、この点には注意が必要です。
アルミは鉄、ステンレスと比べると軽量であり、また空気中では表面に酸化被膜を作るため、錆びにくいことが特徴として挙げられます。軟らかく、融点が低いことから非常に加工性が高い素材であり、こうした利点を生かし、建築では主にサッシや外装材などの材料として使われています。また加工後の形状によっては大きな強度が得られるため、最近ではアルミを柱梁の材料とした建築も登場しています。またリサイクルしやすい素材であるため、リサイクル率が高く、トータルで見たときの環境負荷が低いことから注目を集めている素材でもあります。ただし、他の電位が高い金属と隣り合わせになると、電食によって錆びることもありますので注意が必要です。
c-MA3のルーバーはこの軟らかいアルミの特性を活かし、3次元方向に曲げを加えた複雑な形状になっています。また軽量であるためにルーバーを支える部材が最小限で済み、なおかつ外部でも錆びないためメンテナンス性も高くすることができました。
その場所、使用箇所に合わせて使用する材料を決めることで、長く使えて経済的な建物を作ることが可能になります。適した材料を選択するために、様々な素材の特性を理解しておくことも設計者の大切な業務の1つです。(スタッフ:伊澤)