現在千葉で進めている新築住宅のプロジェクトにおいて、晴天に恵まれた気持ちのいいある五月の日曜日に、上棟式が執り行われました。
上棟式とは、建物の構造である柱・梁・棟が組み上がった段階で、お施主さんが、大工の棟梁をはじめとする現場の方々に感謝して開く、お祝いの儀式です。
最近では、特に都市部において上棟式が行われることは非常に少なくなってきていますが、地方などの場所によっては、近所の人を集めて宴会を開いたり、屋上から餅を撒いたりする等、盛大に行われることもあります。
今回は、家の玄関を入ったところの、階段室にあたる吹き抜け空間を利用し、そこに紅白幕が掛けられ、祭壇に酒、米、塩などの供物が供えられて式の準備が整えられました。
長方形の空間の突き当たりに設けられた祭壇と、2層吹き抜けの柱の間から陽の光りが入ってくる様は、ちょっとした教会のような空間の体裁となり、そこに集まった施主、設計者、工務店、工事に関わっている多くの関係者が、まさにこれからつくり上げられる家の、立ち上がったばかりの空間の中で、よろこびを共有しながら上棟を祝います。
式は、まず一同頭を下げてお祓いがされた後、神主さん(今回は工務店で一番ご年配の方が務められました)による祝詞奏上があり、一人づつ祭壇に向かって2礼2拍1礼する玉串奉天、建物の四隅に1箇所づつ米、塩、酒をまいていく四方払いが行われました。
続いてお施主さんから、棟梁をはじめとする関係者全員に、ここまで工事が進んだことへの感謝と労いのスピーチがあり、設計事務所代表、工務店代表の挨拶があった後、ジュースによる乾杯です。
つい数日前までは、基礎以外になにもなかった敷地に、突如として立ち上がった家のかたちを目の前にする上棟という瞬間は、設計に携わっている側からしても非常に興奮する瞬間ですし、特にお施主さんにとっては、今まで図面でしか想像できていなかった空間を、はじめて実際に確認できることとなり、その驚きや感動、喜びはひとしおです。
関係者一同の表情も皆晴れやかで、どちらかというと厳かな感じのする地鎮祭と比べると、談笑の絶えない非常に楽しいお祝いとなりました。
家をつくるはじまりから終わりまで、特定の大工の集団がつくりあげていた昔とは異なり、工事の種別ごとに専門の業者が入れ替わりで入っていくかたちに変わったことで、施主とつくる側の関係が希薄になったことが、上棟式を行うことが少なくなった理由の一つに挙げられるかもしれません。
しかし、今回のように、工事中のある時点で施主はその労をねぎらって感謝を表し、つくる側も実際に施主と会ってその人柄を知り、感謝されることで、その家に対する思い入れを深くすることができる上棟式という儀式は、非常に意味のあるものだと感じました。(スタッフ:神津)