太陽熱のエネルギーを冷暖房・給湯に利用するのがソーラーシステムですが、これは大きくアクティブソーラーシステムとパッシブソーラーシステムに分類されます。
アクティブソーラーシステムは機械的な設備を使用する方式で、太陽光パネルなどが代表的な例です。それに対して、パッシブソーラーシステムは機械的な設備は使用せず、建築自体の工夫によって太陽熱を利用します。
そもそも、ソーラーシステムというのは、太陽熱のエネルギーを、集熱→蓄熱→放熱するシステムが一般的で、パッシブソーラーシステムの場合、建築のどの部位で、上記の過程を行うかによってその種類が異なります。
そして、パッシブソーラーシステムを考える上で、もうひとつ重要なことは、光や熱の時間的変化をうまく利用すること。大げさな表現ですが、要するに、昼間集熱した熱を夜間放熱する、もしくはその逆で夜間に蓄冷するということです。
また、パッシブソーラーシステムは、冬期の暖房を目的にしたパッシブソーラーと、夏のためのパッシブクーリングに分類されます。
まずは、パッシブソーラーについて紹介します。
パッシブソーラーの代表的なものとしては、
・ダイレクトゲイン(直接集熱)
・トロンプウォール
・温室(サンルーム)付設型
・空気循環型(サーモサイフォン)
が挙げられます。
1.ダイレクトゲイン(直接集熱)
南面する窓や天窓から日射を導入し、室内の床や壁を蓄熱部位とする方式。夜間に室温が低下し始めると蓄熱部位である床や壁から放熱され、暖房効果を得ます。
2.トロンプウォール
集熱窓の室内側に自立した蓄熱壁を設け、これを貫流して室内に到達する熱で暖房効果を得ます。蓄熱壁の電熱のタイムラグで夜間暖房を行います。
3.温室(サンルーム)付設型
居室の南側に付設したサンルームを集熱部位とする方法。温室で暖められた空気を直接居室に送る方法や床下土間に送る方法などがあります。
4.空気循環型(サーモサイフォン)
空気式集熱器で暖めた空気を循環させる方法。空気式集熱器は暖房空間よりも低い位置に設置し、自然対流によって熱を移動させる方式、二重壁の間の空気層に空気を循環させる方法などがあります。
パッシブソーラーは寒冷地のソーラー暖房から始まったと言われていますが、日本ではむしろその逆で、夏のための建築的工夫が伝統的です。大きな茅葺き屋根や深い庇は典型的な遮熱デザインと言えるでしょう。こうした工夫を総じてパッシブクーリングと言います。
このように一口にパッシブソーラーシステムといっても、様々な種類のものがあります。
私たちが設計をするときには、敷地の状況に応じて、意識的に取り入れているものもあれば、無意識のうちに実践しているものもあります。
最後に、パッシブソーラーシステムの弱点として、元々自然エネルギーを利用するため、それ以上のエネルギーは創出できませんし、天気が悪ければ当然その力を発揮できません。ですから、大事な事は、自然エネルギーを上手に利用しつつ、足りない分は機械的空調設備を使うなりして、快適な室内環境を創出することにあると思います。(スタッフ:山添)
追記:写真は、最近竣工した住宅です。南側に大きな開口を設けて自然光を取り入れています。太陽光だけでも、かなり暖かく、施主も満足されているようでした。