一口にエコロジーと言っても、建築・建設にまつわるエコロジー手法は多種多様なため、全体像が把握しづらいように思います。ここでは様々なエコロジー手法を簡単に分類しつつ、どのような手法があるのか紹介してみます。
建築においては「建設時のエコロジー」と「運用時のエコロジー」の2つに大別できます。「建設時のエコロジー」とは主に建物に使用する材料などに注目し、建設過程や建物そのものにかかる環境負荷を低減するもの。「運用時のエコロジー」とは、建物を利用していく段階でのエネルギー消費を抑え、環境負荷を低減しようという考えです。
建設時のエコロジー
こちらに分類される手法は、それほど多くありません。中心となるのはいわゆるリサイクル建材など、−環境負荷の低い素材を使う方法−です。しかしリサイクル建材は多くの分野で研究が進み、現在では木材やガラス、プラスチックなど様々なリサイクル素材が登場しており、幅広い選択肢から選ぶことが可能になっています。
また二次的な環境負荷の低減方法として「地産地消」といった、資材をその産地で消費することにより、運搬に係るエネルギー消費を削減する方法もあります。
運用時のエコロジー
代表的なのは−建物本体の性能を高め、空調等によるエネルギー消費を抑制する手法−です。
高断熱・高気密住宅や、壁面緑化、蓄熱と言った建物本体の性能を高める方法、省エネルギー型照明などの設備によって性能を高める方法などがこれに相当します。
エネルギー消費の抑制に対し、より積極的にエネルギーを生み出そうとする−必要なエネルギーを自給する手法−としては、パッシブソーラーシステムや太陽光発電を利用した建物が挙げられます。助成金のニュースにも見られるように、最近、特に注目されている手法と言えるかも知れません。
またエネルギー抑制をロングスパンで考える場合には、−建物のライフサイクルを長期化し、解体・建設、メンテナンス時の環境負荷を低減する方法−があります。石材などの材料を使用して長寿命化させたり、政府の掲げる200年住宅、光触媒コーティングによる自浄作用によりメンテナンス効率を高める方法などがこれに当たります。
以上が、建築におけるエコロジーの手法の大まかな概要になりますが、上に列挙した方法はいずれも何らかの設備や資材によりエコロジーを実践する方法です。
これらの方法もエコロジーを考える上ではもちろん大切ですが、それ以上に重要になってくるのが、「ライフスタイルとしてのエコロジー」ではないでしょうか。
建物の設計から、建設、運用、メンテナンス、解体、廃棄までの各段階で輩出されるCO2を比べると、圧倒的に多いのが、運用段階でのエネルギーによるもので、全体の60%を超える計算になるそうです。
つまり建設段階よりも、建物が出来てからの利用方法、生活における環境負荷の影響の方が大きいということです。
たとえエコロジーに配慮した住宅やビルを建てても、そぐわない使い方をしたり、過剰に電化製品を使ったりしては効果は薄くなってしまいます。逆に言えば、建物側でエコロジーについて特別なことをしなくとも、生活に身近なところからでもエコロジーはできると思います。
例えば、冬の夜は窓から熱が逃げないようにカーテンを閉めて断熱効果を高めたり、夏場はなるべく窓からの気持ちのいい風を入れて過ごすなど、日々の生活の中のひと手間で実行できるものもたくさんあります。こうした生活に関わる「ライフスタイルとしてのエコロジー」も重要なエコロジー手法でしょう。
「建築におけるエコロジー」と「ライフスタイルとしてのエコロジー」、双方が組み合わさって初めて本物のエコロジーな建築が生まれるのではないでしょうか。(スタッフ:伊澤)