テレデザインにおける様々な活動や思索や情報を、この BLOG のコーナーにおいて紹介します。近況報告や、プロジェクトリポート、あるいはテーマ別のトピックなど、 気軽に読んで頂ければ幸いです。

エコロジーTIPS:様々なエコロジー手法

2009年3月31日

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アルミとガラスをリサイクルした
アルセライト(内外テクノス)
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壁面緑化の例

一口にエコロジーと言っても、建築・建設にまつわるエコロジー手法は多種多様なため、全体像が把握しづらいように思います。ここでは様々なエコロジー手法を簡単に分類しつつ、どのような手法があるのか紹介してみます。

建築においては「建設時のエコロジー」と「運用時のエコロジー」の2つに大別できます。「建設時のエコロジー」とは主に建物に使用する材料などに注目し、建設過程や建物そのものにかかる環境負荷を低減するもの。「運用時のエコロジー」とは、建物を利用していく段階でのエネルギー消費を抑え、環境負荷を低減しようという考えです。

建設時のエコロジー
こちらに分類される手法は、それほど多くありません。中心となるのはいわゆるリサイクル建材など、−環境負荷の低い素材を使う方法−です。しかしリサイクル建材は多くの分野で研究が進み、現在では木材やガラス、プラスチックなど様々なリサイクル素材が登場しており、幅広い選択肢から選ぶことが可能になっています。

また二次的な環境負荷の低減方法として「地産地消」といった、資材をその産地で消費することにより、運搬に係るエネルギー消費を削減する方法もあります。

運用時のエコロジー
代表的なのは−建物本体の性能を高め、空調等によるエネルギー消費を抑制する手法−です。
高断熱・高気密住宅や、壁面緑化、蓄熱と言った建物本体の性能を高める方法、省エネルギー型照明などの設備によって性能を高める方法などがこれに相当します。

エネルギー消費の抑制に対し、より積極的にエネルギーを生み出そうとする−必要なエネルギーを自給する手法−としては、パッシブソーラーシステムや太陽光発電を利用した建物が挙げられます。助成金のニュースにも見られるように、最近、特に注目されている手法と言えるかも知れません。

またエネルギー抑制をロングスパンで考える場合には、−建物のライフサイクルを長期化し、解体・建設、メンテナンス時の環境負荷を低減する方法−があります。石材などの材料を使用して長寿命化させたり、政府の掲げる200年住宅、光触媒コーティングによる自浄作用によりメンテナンス効率を高める方法などがこれに当たります。

以上が、建築におけるエコロジーの手法の大まかな概要になりますが、上に列挙した方法はいずれも何らかの設備や資材によりエコロジーを実践する方法です。

これらの方法もエコロジーを考える上ではもちろん大切ですが、それ以上に重要になってくるのが、「ライフスタイルとしてのエコロジー」ではないでしょうか。

建物の設計から、建設、運用、メンテナンス、解体、廃棄までの各段階で輩出されるCO2を比べると、圧倒的に多いのが、運用段階でのエネルギーによるもので、全体の60%を超える計算になるそうです。
つまり建設段階よりも、建物が出来てからの利用方法、生活における環境負荷の影響の方が大きいということです。

たとえエコロジーに配慮した住宅やビルを建てても、そぐわない使い方をしたり、過剰に電化製品を使ったりしては効果は薄くなってしまいます。逆に言えば、建物側でエコロジーについて特別なことをしなくとも、生活に身近なところからでもエコロジーはできると思います。

例えば、冬の夜は窓から熱が逃げないようにカーテンを閉めて断熱効果を高めたり、夏場はなるべく窓からの気持ちのいい風を入れて過ごすなど、日々の生活の中のひと手間で実行できるものもたくさんあります。こうした生活に関わる「ライフスタイルとしてのエコロジー」も重要なエコロジー手法でしょう。

「建築におけるエコロジー」と「ライフスタイルとしてのエコロジー」、双方が組み合わさって初めて本物のエコロジーな建築が生まれるのではないでしょうか。(スタッフ:伊澤)


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平成10年国土交通省記者発表資料より

基礎配筋検査

2009年3月25日

前回地鎮祭をリポートした住宅のプロジェクトが、基礎のコンクリートを打つ前の段階まで工事が進んだため、基礎配筋検査を行ってきました。

基礎配筋検査では、基礎部分の鉄筋が、コンクリートと一体となって上部構造をしっかりと支えることができるように配置されているか、を確認します。

昨今の構造偽装問題等によって、鉄筋コンクリート構造における鉄筋の重要性については、多くの人が知るところとなりましたが、木造住宅基礎の鉄筋の仕様、配筋方法が建築基準法によって明確に規定されたのは、2000年の改正時によるもので、実は結構最近のことです。

それ以前は、鉄筋の量や配置のしかたは設計者の判断に委ねられた部分が多く、設計によって住宅の耐震性に大きな差がありました。これが、阪神大震災をはじめとする何回かの大きな地震を経て、地震時の振動によって基礎が破断し、上部構造に倒壊等の大きな影響を与えるのを防ぐために、細かい基準が決められ本日に至っています。

ところで、そもそもなぜコンクリートに鉄筋が入ることによって、より強い構造体となることができるのでしょうか。

これは、鉄筋とコンクリートが、それぞれの構造的、物性的弱点を互いに補い合うことができる関係にあることによります。

地震時には、その揺れによって、構造体を圧縮する力と引張る力が交互に連続してかかります。コンクリートは圧縮の力に対しては強いのですが、引張りの力には弱く、限界を超えるとすぐに崩壊してしまいます。逆に鉄筋は、そのままだと圧縮されればすぐに折れてしまいますが、引張りの力に対しては強く、限界耐力をこえた後もすぐには崩壊せず、のびることで崩壊を遅らせます。(これをじん性といいます)

この他にも、鉄筋とコンクリートは以下のような点で、お互いの弱点を補い合っています。

鉄筋         
・強度・剛性が高い       
・ 大気に触れることで錆びる   
・ 熱に弱い           

コンクリート
・強度・剛性は鋼材に劣る
・鉄筋周囲に不動態膜をつくり錆びにくくさせる
・熱を伝えにくい

まさに理想的な組み合わせといえますが、この相互補完の関係をつくるには、コンクリートの量が多すぎても、鉄筋が入りすぎていてもよくありません。
鉄筋の径や配置間隔がきちんと守られているか。鉄筋の継ぎ目が弱くならないよう、規定の重ね長さがとられているか。鉄筋を錆びから保護できるコンクリートのかぶり厚さがとれているか。 構造の欠損になる配管の穴廻りは鉄筋で補強されているか。等々。。
これらの条件がすべて満たされることにより、はじめて性能が発揮され、地震に耐えることのできるしっかりとした基礎を作ることができるのです。

基礎配筋検査は、これをきちんとやっておかないと、いくら上部構造をしっかりつくっても全く意味のないものになってしまう、非常に重要な検査です。
検査にはプロジェクト担当以外のスタッフも参加し、確認内容が漏れなくチェックできる体勢をとって臨みます。

今回も、現場でひとつひとつ細かく確認し、修正を求めるところを伝え、その部分について後日きちんと直されているかを確認した上で、コンクリート打設を指示しました。(スタッフ:神津)


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銀座ミキモト
 タンカー級の構造物

2009年3月10日

久しぶりに日曜日の午後に、銀座ミキモトの上にあるレストランにちょっとランチをしに行ってきました。

この建物は建築家の伊東豊雄さんが設計したものですが、実は建築の構造としては、かなり大胆なことをやっています。建物の工事ではなかなかできないような方法で造られており、鉄板を溶接で組み合わせて壁を立ち上げ、力の伝わり方を検証しながら開口部をデザインし、いわばタンカーの造船技術を応用した構造物です。

かわいらしい開口部がランダムに開いているようにみえますが、壁そのものが構造体になっていますので、いわゆる「柱」はどこにもなく、これだけの階数(9階建て)がありながら、薄い12ミリと9ミリの鉄板の中をコンクリートで充填し、たった22センチ厚の壁だけでこの重量を支えています。

残念なのは、こういった構造的なチャレンジが、内部空間として生かされていないことです。なかなか、一般の来訪者に、この建物の構造的な面白さをわかってもらうのは、難しいものがあります。

いろいろ諸条件やら、クライアント側の要望なり、調整しきれなかったことが大きいとは思いますが、その構造的な面白さが浮遊感として感じられるような開口部の面白さ、透明感を出して欲しかったと思います。(田島則行)


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