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東京という場所の特徴のひとつである「密集地」。この住宅もそうした昔ながらの面影を残す地域に立っている。角地ではあるものの、道路から後退距離が必要であったために、非常に細い建物になることは必然であった。
そうした「限られた空間」をいかに操作して、心地よさを生み出す唯一無二の「豊かな空間」へと発展させることができるか。シンプルだが、尽きない問題が焦点となったプロジェクトである。


キーとなったのは人の目を自然と動かせる視線の多様さであった。

小さな空間であればあるほど人が壁や家具にデコレーションを施すように、大きく拡散した空間では逆に雄大な自然が我々を癒してくれるように、空間のスケールと視線の多様さは密接に関係する。
そうしてたどり着いたのは、スリットによって、空間をさらに分割してしまうことであった。細長い空間をさらに刻み、より細長い2つの空間に分けてしまう。スリットは視線を誘い、空間の起伏を生み、そこから射す光は刻々と変化し、時間の移ろいを演出する。

現れた空間は細長さが強調されると同時に、多様な視線を獲得し、個性と彩りのある空間へと進化した。

  実際の建物が出来てきて、内部の空間が立ち上がると、想像していた以上にスリットを設けたことによる効果は大きかった。

敷地や周囲の状況から来る様々な特性をつかみ、それを最大限に生かした空間へと翻訳していくこと。設計にあたりいつも心がけていることだが、この建物はうまく訳せたと思う。ネガティブな要素こそポジティブに捉えられる視点を持ち続けていきたい。

名称:split house
所在地:東京都大田区
主要用途:専用住戸
構造・規模:鉄骨造一部木造 地上3階
建築面積:39.18m2
延床面積:86.35m2
竣工年月:2005年8月

設計者:田島則行+テレデザイン
担当:伊澤杉人・神津好英
構造:ストラクチャード・エンバイロンメント
担当:アラン・バーデン

photo© 野秋 達也